「鉄血のオルフェンズ」はガンダム史上最哀のシンギュラリティSFだった【ネタバレなし】


オルフェンズ
オルフェンズを見たことない人にも読んでもらいたい内容なので、ネタバレはありません。

久々にガンダム全部見ました。鉄血のオルフェンズ。


機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ/Amazonプライムビデオ

僕のタイムラインにも絶望的な「オルフェンズロス」に陥ってる人が散見されたので、どんなもんかと思って見てみましたが…本当に哀しい、ガンダム史上”最哀”のストーリーなんじゃないでしょうか。最近のガンダム見れてないけど。

どのシリーズでもガンダムは何かしらの教訓を残してくれます。「戦争の悲しさ」に目を向けがちですが、オルフェンズは人類とテクノロジーとの向き合い方についても警笛を鳴らしているようでした。


物語のキモは「機械」に繋がれた「人間」

オルフェンズの世界観の中で、キモになるのは「阿頼耶識(アラヤシキ)システム」です。

阿頼耶識システム(あらやしきシステム)
厄祭戦時代のMSのコクピットに採用された有機デバイスシステム。本来は宇宙作業機械の操縦用に開発されたが、MSの性能を限界まで引き出す目的で軍事転用された。
パイロットの脊髄に埋め込まれた「ピアス」と呼ばれるインプラント機器と操縦席側の端子を接続し、ナノマシンを介してパイロットの脳神経と機体のコンピュータを直結させることで、脳内に空間認識を司る器官が疑似的に形成される。これによって、通常はディスプレイなどから得る情報がパイロットの脳に直接伝達され、機械的プログラムに縛られない操作が可能となる。端子の埋め込みは複数回行うことも可能で、回数を重ねるほど伝達される情報量も増加する
wikipedia「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」参照

簡単に言うと、機械(モビルスーツ)とパイロットの脊髄を繋いで、機械の性能を最大限まで引き出すシステムです。

物語内の法律では、阿頼耶識システムは禁止されていますが、強制労働を目的に非合法に利用されていて、阿頼耶識を使っている人は軽蔑の対象とされています。

阿頼耶識が禁止されている理由は無論、恐ろしい軍事兵器となりうるからです。

反面、阿頼耶識で機械と接続された人間は、識字していない子供でもシステムを通じて操縦方法できてしまうという圧倒的な利便性があります。人間の欠陥を保管して、機械の能力も最大限に引き出す。

その結果、孤児や人身売買された子供が悪い大人に利用されて、阿頼耶識システムに繋がれてしまい、強制労働だけでなく戦争の道具とされてしまう。と言うのがオルフェンズの物語のキモになります。

パワードスーツは良くて阿頼耶識はダメ?

この物語の設定を現実の世界と照らし合わせるとどうなるでしょうか。

僕は阿頼耶識システムを見た時に、すぐさま「パワードスーツ」を思い浮かべました。

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パワードスーツは重たいモノを持ったり、力が弱くなったお年寄りを補助したりする、今ホットな技術ですよね。

このパワードスーツの技術が極限まで進化したらどうなるでしょうか?最高のケースと最悪のケースを考えてみましょう。

まず最高のケース。それは人間の能力が機械によって拡張されて、なおかつ完全にコントローラブルであることです。

日常生活の不便はことごとく解消されて、人間の健康寿命は爆発的に伸びます。まさに技術との共存。

対して最悪のケースはどうでしょう。それは人間が技術をコントロールできず、機械が暴走してしまうことです。

さらに機械は人間を邪魔者と判断して襲ってきたらもう絶望です。

オルフェンズの世界はまさに後者、技術が最悪の進化を遂げてしまった状態。パワードスーツが最悪に極限進化したものがガンダムだと言えます。

登場人物はことごとく強い力に引き寄せられて、大義名分は違えど結局は阿頼耶識を利用した暴力で目的を成そうとします。

この物語設定は現代を生きる僕たちに向けられた風刺だと受け取れます。僕の好きな初代ガンダムやZガンダムなどは、子供が戦争の道具にされてしまう哀しさを描いていますが、オルフェンズは間近に控えている人類の未来を暗示しているようです。

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シンギュラリティ時代はすぐそこ

ま、マジレスすると、オルフェンズの世界くらい技術が進んでたらモビルスーツに操縦席なんか絶対付いてないですけどね。リモートでやるに決まってるっしょ。

僕が言いたいのは、オルフェンズはめっちゃ面白いよ!ってことと、シンギュラリティは近いよ!ってことです。



僕の好きな本「インターネットの次に来るもの」では、シンギュラリティには「強いシンギュラリティ」と「弱いシンギュラリティ」があるとしています。

一般には「強いシンギュラリティー」と「弱いシンギュラリティー」の二つの
バージョンが知られている。強いシンギュラリティーは、未来が超知能によってもたらされると考える。もし自分よりスマートなAIを作れるAIがあれば、理論的には世代を重ねるにつれそれ以上ないレベルのAIになっていく。実際にはAIが自力で次々とよりスマートな次世代を生み出し、それが無限に加速していくと、最後にはAIが神のような知恵を持って存在する問題すべてを解けるところまで到達してしまい、人類を置き去りにするというものだ。
この「強いシンギュラリティ」こそ、オルフェンズの世界のように人間がコントロールできない、むしろ人間が支配されてしまう技術であると言えそうです。ちなみに本書で「弱いシンギュラリティ」は技術と人間とが相互に助け合って生きていくものだと語っていて、著者も弱いシンギュラリティの方が実現されると予想しています。



技術の爆発的な進歩は不可避な未来なわけですが、そのとき僕らはどんな暮らしをしてるんでしょうね。

とまあ、長々と語りましたが、そんだけ語りたくなるガンダムだったんです。もっとみんなと語りたいのでとりあえずAmazonで見てみてください。


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ラフタさんの具合の良さそうな同人あったら教えてください(雑なオチ