泣きそうになって喋れなくなる症状は年のせい?

泣きそうになって喋れなくなる症状は年のせい?


美しいメロディや感動的なドラマを目の当たりにすると、鼻がツンとして喋れなくなることが増えた。正確には、喋れるんだけど喋ったら多分泣いちゃうんだが構わん?って感じ。

美しいメロディや感動的なドラマで泣くのは変なことじゃないワケだが、妙なのである。僕の趣味じゃない音楽や、ツマランと思いながら見ているドラマでもこの症状は容赦なく襲ってくるのだ。

 

創作物で泣けなかったあの頃

単純に年をとって涙もろくなったのか?そもそも僕は子供の頃、音楽やドラマで感情がたかぶるタイプの人間じゃなかった。

卒業式とか、野球部を引退した時とか、リアルなイベントで泣くときはあった(リアルイベントでも泣くのはレアだったけど)。しかし、創作物では泣かなかった。どうしても、創作物の向こう側でシタリ顔のクリエイターが「感動させてやろう」と手ぐすねを引いている感じがして、作品に没入できなかった。

そんな太一少年(当時18歳)もついに創作物で初めて泣かされる日が来た。ケーブルテレビでなんとなく見ていた映画『グリーンマイル』にヴァージンを奪われたのだ。

心優しい死刑囚ジョン・コーフィーが、冤罪の罪を晴らせないまま電気椅子に座らされ無念そうな表情をした時にブワブワに泣いたのをよく覚えている。まあ、あんなもん誰でも泣きますよ。みなさんもそうですよね?

ヴァージンを奪われ、一通り泣き終わった太一少年は思った。俺も人並みの感受性があったのか。なぜかホッとしたのを覚えている。

それ以降、年を重ねるごとに指数関数的に涙もろくなっていった。

 

100%僕を泣かせる方法

僕を泣かせてみたい人に方法を教えておく。

まず、デジモンアドベンチャーの最終回を僕に見せる。

「ミミ、ごめんなさい!」からの「いいのよ〜パルモンさよなら〜」からの「ミミ〜!あっ!(パルモン転ぶ)」からの「♫むげーんだーいなー夢の後の〜」のくだり。

このシーンを見せた後にこう質問する。「和田光司(※)ってどんな歌手だったの?」

※和田光司はデジモンアドベンチャーOP曲『Butter-Fly』で知られるアニソン歌手で、闘病しながら歌手活動を続け2016年に亡くなった

これで間違いなく泣きます。(このセンテンスを書いてるだけで泣きました)

 

山岸由花子でもSexy Zoneでも泣く

話を戻そう。若い頃に泣かなかったツケがまわったのか、今は些細なきっかけで鼻がツンときてしまう。もはや鼻ツンのスイッチがぶっ壊れている気がする。

最近だと、Netflixでジョジョ第4部のアニメを見ていて山岸由花子が「ドドドドド…」としているシーンで鼻がツンとしてしまった。『山岸由花子は恋をする その①』『山岸由花子は恋をする その②』『山岸由花子は恋をする その③』で同様の症状が出たので、もう間違いなく山岸由花子の「ドドドドド…」にやられてしまっているのだ。

もう一つ例を挙げる。Netflixの『フラーハウス』で、主人公たちが東京にやって来る回がある。そこでサプライズ的にSexy Zoneが登場して、マリウス君が主人公の女性をステージに上げて一緒に代表曲『Sexy Zone』を歌うシーンがある。ドラマのクライマックスと曲のクライマックスが同時にやってきて、パンチラインの「♫Mildも地球の裏側じゃWildになるよ〜」のところでこれまた鼻ツン。

ふたつの例を挙げたが、両方とも僕は別に大して感動していない。むしろ心では「ウケるんだが〜」と嘲笑するレベルのテンションだ。でも、多分このタイミングで話しかけられたら涙が出てしまうだろう。

 

似たような人もいる

僕は恥ずかしくて、この症状を誰にも知られたくなかった。しかし、たまたま開いたネットの記事を読んででハッとした。

くも膜下出血が原因で高次脳機能障害を抱える鈴木大介さんの連載で、同じく高次脳機能障害を抱える元globeのKEIKOさんについてこう書かれていた。

恐らく僕よりも遥かに重い高次脳機能障害であろうKEIKOさんの苦悩もまた、想像するに涙ぐましい。小室さんはKEIKOさんが歌うことに興味を失ったと言われたが、そういえば僕もまた高次脳になって2年近くは、歌うことができなくなった。

僕の場合は口腔や鼻腔にマヒが残っていたから、微妙な声量や音程のコントロールが効かずに音痴になったというのもある。だがそれ以上に、メロディの優れた曲は、旋律そのものに溢れ出して来る涙を抑えることができず、とても歌うどころじゃない。

この感情の制御の難しさ=脱抑制症状は、高次脳機能に普遍的な症状だ。新しい歌を憶えようにも、よほど繰り返さない限り歌詞を記憶するのは困難で、病前に散々歌った歌詞も歌っているうちにどこまで歌ったのかが分からなくなり、続かない。

なるほど、なんとなく僕の症状に似ているじゃあないか。僕は脳に障害があるわけではないが、同じような症状の人もいるんだな。安心安心。

ちなみにNetflix版のデビルマンの主人公の不動明も、人に共感すると号泣してしまうという設定だったが、あれも僕と同じ症状と考えるとまんざらヘンテコな設定でもないなと思える。

 

結論としては、Netflixばっかり見てないで仕事探せよ。ってことですね(雑なオチ